提携専門家相談事例

おひとりさま必見! ~思いを実現するための任意後見4点セット~

おひとりさまの終活について

みなさん、こんにちは。司法書士事務所あしたば総合法務の代表司法書士の高橋伸光です。
前回、前々回と、ご本人がお元気なうちから取っておくべき対策のなかから、遺言について実例を交えてご紹介してきました。

今回は、特におひとりさまが終活について考える際、遺言と一緒に検討しておくべき対策についてご紹介したいと思います。その対策とは、ずばり、

・任意後見契約
・継続的見守り及び財産管理委任契約(任意代理契約)
・死後事務委任契約

です。これらに遺言公正証書を加えた4点を、私は「任意後見4点セット」と呼んでいます。以下、各制度の概要を見ていきましょう。

任意後見4点セットの概要

①任意後見契約

4点セットの中心となる制度です。本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と後見する人(任意後見人)を、事前の契約によって自ら決め、公正証書で契約書を作成するものです。

これまでご紹介してきた「法定後見制度」は、実際に認知症等で判断能力を欠く状態となってしまった場合に家庭裁判所に申立てをすることで後見人が選任されます。後見人候補者の希望を言うことはできますが、その通りになるとは限らず、最終的には裁判所の判断となります。任意後見契約はそれとは違い、任意後見人という、今後のことを任せたい人を自ら決めることができるのがポイントです。

自分が元気なうちに、自分が信頼できる人を見つけて、その人との間で、もし自分が老いて判断能力が衰えてきた場合等には、自分に代わって、財産管理や必要な契約締結等をしてくださいとお願いしてこれを引き受けてもらう契約が、任意後見契約なのです。そのため、任意後見契約は、将来の老いの不安に備えた「老い支度」ないしは「老後の安心設計」であると言われています。
(出典:日本公証人連合会ウェブサイト https://www.koshonin.gr.jp/business/b02

さて、任意後見契約は契約直後から開始されるわけではなく、ご本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所に任意後見監督人(その名の通り任意後見人を監督する人)の選任を申立て、任意後見人と任意後見監督人が就任し体制が整うことで、初めてその効力が発生します。
また、残念ながらご本人が亡くなると、任意後見人の代理権は消滅してしまうため、生前、任意後見人だった方でも、葬儀等の事務手続きや相続手続きを代理することはできません。

それでは、任意後見が開始するまでの間や、ご本人が亡くなられた後、つまり 任意後見契約の効力が及ばない期間はどうすれば良いでしょうか?

このカバーしきれない期間のサポート体制を整え、より万全に備えることを可能にするのが、4点セットの任意後見契約以外3つの制度になるのです。

②継続的見守り及び財産管理委任契約(任意代理契約)

・継続的見守り契約

ご家族などが同居していれば良いですが、ひとり暮らしをしている方、近くに親族がいない方などは、ご本人の判断能力が低下したことを誰も確認できませんので、せっかく契約した任意後見契約を有効に開始できる可能性が低くなってしまいます。

そういった状況にならないために用意されている契約の一つが「継続的見守り契約」です。見守り契約は、契約を結んだ後から任意後見契約の効力が発生するまでの間、任意後見人になる予定の方が、ご本人と定期的にコミュニケーションをとり、任意後見契約の効力を発生させるタイミングをチェックしてくれる契約です。

具体的には、定期的に電話連絡で近況確認を行うことや、2~3か月に一度、直接面会して、健康状態や生活環境のチェックを行うといった内容が多いです。

・財産管理委任契約(任意代理契約)

例えば、認知症にはなっておらず意思表示をすることはできるものの、年齢とともに足腰が弱ってきて身の回りのことを任せたい、といった場合のように、任意後見契約の効力が発生する前から財産を管理してもらったり、必要な契約を代理してもらいたいと考える方もいらっしゃいます。そのことを実現する契約が「財産管理委任契約(任意代理契約とも言います。)」になります。

この契約では、日常的な預貯金の管理から公共料金の支払い、収入支出の管理、賃貸物件の管理など、任せたいことを契約に定めることにより、その行為を代理してもらうことができるため任意後見契約と似ていますが、ご本人の判断能力の状態によりそれを適用する時期が違うということになります。

これらをまとめてひとつの契約として締結するものが、「継続的見守り及び財産管理委任契約」というわけです。

③死後事務委任契約

ご本人の死後、行うべき事務手続きが多くありますが、任意後見人の代理権が消滅してしまえば、遺体の引取や葬儀に関すること、医療費の精算、施設や賃貸住宅の費用の支払いや退去手続き、その他の諸手続等の事務手続きをすることはできません。

また、葬儀や納骨等の死後の事務手続きに関して、何かしらの希望を持っていたとしても、それを実現してくれる人に予め頼んでおかなければ、それが実現される可能性は低くなります。

近くに相続人がいる場合は、手続きをやってくれる場合も多いと思いますが、遠くに住んでいたり、親族と疎遠であることや、そもそも親族がいない方もいらっしゃるでしょう。

そういった場合に備えて契約するのが「死後事務委任契約」です。

死後事務委任契約の中で、死後の手続きに関する希望や誰に何を任せるかを決めておくことで、葬儀・火葬・納骨等のこと、医療費の支払いや、施設の退去手続きのこと等について、自分の望むような形で、死後の手続きを対応してもらうことが可能となります。

④遺言公正証書

遺言については前回、前々回とご紹介してきましたので、今回は詳細を割愛します。ご自身の財産の承継について等を自らで書かれる「自筆証書遺言」よりも、公証人が関与する「遺言公正証書」の方が安心ですので、おすすめしています。

まとめ

今回は生前の有効な対策のうち、私がおすすめする任意代理4点セットの概要を見てきました。

相続の対策というと、遺言がまず思い浮かぶ方が多いかと思いますが、今回見てきたようにそれ以外にも様々な制度が用意されています。一つの制度ですべてクリアになれば良いのですが、ご本人の状態やご希望に合わせて組み合わせて利用する必要があります。

これまでも多くのお客様からご相談いただいておりますが、最近は今回ご紹介した制度を利用することでご希望が実現できることがますます増えてきたと感じています。

次回は任意後見4点セットをより身近に感じていただき、必要な方にとってのきっかけ作りとなるよう、実際に担当させていただいた事例や利用にあたっての注意点をご紹介したいと思います。お楽しみに!

ご相談がございましたら、ぜひ当ホームページのオンラインサービスをご利用ください。

執筆者:司法書士 高橋 伸光

司法書士事務所あしたば総合法務 代表司法書士。登記手続きをはじめとする、従来の手続代行という枠に捉われず、生前対策や遺産承継業務、また、後見人や財産管理人といった分野に力を入れ、お客様に寄り添う、身近な法律家として活躍している。

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