提携専門家相談事例

相続登記だけではない!不動産の住所氏名変更登記も義務に!

住所氏名変更登記の義務化について

みなさん、こんにちは。司法書士事務所あしたば総合法務の代表司法書士の高橋伸光です。
前回は法改正による相続登記の義務化についてご紹介しました。しかし、義務化となるのは、実は相続だけではありません。併せて法改正があり、住所氏名変更の登記も義務化になりました。みなさんは所有されている不動産の登記上の住所、氏名がどのようになっているか、そこから変更がないか、把握されていますか?ぜひこの機会にチェックしてみてください。

今回は、住所氏名変更登記について、法改正のポイントと、簡単なようで奥が深い、登記手続きについて事例を交えてご紹介します。

住所氏名変更登記義務化のポイント

今回の改正は、不動産所有者に住所氏名の変更手続きを課すことにより、社会問題になっている所有者不明土地問題を解消するという目的があるため、相続登記同様、遡って適用されます。つまり、法改正以降の変更に限らず、引越し等により住所が変わっているにも関わらず、現時点で変更登記をしていない場合はその対象になります。また、住所だけでなく、婚姻などにより氏名に変更があった場合にも登記義務が生じます。登記をしないとペナルティの対象になりますのでご注意ください。

2年以内に変更登記をしなければならない

改正法においては、所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けています。

ただし、この義務化する改正法はまだ施行されていないので、現時点においてはまだ義務とはなっていません。
施行日は「法律の交付日から5年以内」に指定される予定です。令和3年4月28日に交付されたので、そこから5年以内に施行されることになります。

すでに発生した変更については施行後2年以内に

今回の改正法は、住所、氏名の変更事由の発生が法律の施行前であるか後であるかを問わず、いずれの変更についても適用されます。施行前の変更に適用できないと、変更登記が行われずに放置されている現状の問題を解決できないためです。

もし、すでに変更が発生しているけれども不動産の変更登記をしていない場合は、改正法の施行日後2年以内に変更登記すれば良いことになります。

変更登記しない場合のペナルティは過料5万円

義務化となる以上、手続きをしていない場合にはペナルティが待っています。改正法の施行日以降、「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処することとされましたのでくれぐれも注意してください。

改正後の不動産登記法

(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
第七十六条の五 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

(過料)
第百六十四条 (中略)
2 第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

住所変更登記の事例

住所変更登記手続きは、住所の移転の事実を証明する必要がありますが、基本的には住民票があれば、ひとつ前の住所からの移転の事実が記載されていますので足りることになります。問題は、住所を転々と移しているにも関わらず変更登記をしておらず、何年も経過してしまった結果、住所移転の履歴を公的な書類で証明することができなくなってしまった場合です。ここでは担当した住所変更登記のうち、こうした難しいケースをご紹介します。(実際とは内容を少し変更しています。)

<概要>

依頼者:Aさん(50代男性)

会社勤めで転勤が多く、ここ15年で下記のように4回引越し、住所が変わっている。

①横浜市鶴見区

②川崎市幸区(平成18年転入)

③名古屋市中区(平成25年転入)

④長野市(平成29年転入)

⑤横浜市中区(令和2年転入)

①のときに投資用マンションを購入したが、この度、その際の住宅ローンを完済し、抵当権の抹消登記をすることになったものの、登記上、①の住所のままなので、前提として住所変更登記が必要と知った。

住民票戸籍の附票を取得したり、保管していた過去の住民票を確認したものの、②→⑤までしか証明できず、①→②を証明するものが手に入らない。また、いずれかの引越しのタイミングで権利証を紛失してしまった。そこで、どのように手続きを進めたら良いか分からず相談にいらした。

<対応>

戸籍の附票とは、本籍地の市区町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されていることから、住所変更手続きに際して非常に重要な書類になります。

しかし、除籍や改製といった理由で戸籍が変わってしまうと、これまでは5年以上経過により廃棄されてしまっていましたので、時間の経過により、古い記録が残っていないことが多いのです。

また、権利証は、不動産の所有者に対して発行され、再発行できないものですので、所持している者が登記名義人であるということが強く推認できます。よって、住所の履歴が証明できない場合には、権利証を提出することで手続きが可能になります。(ただし、Aさんは紛失してしまっています。)

そこで、このケースでは下記の書類を法務局に提出し手続きを行いました。(問題なく完了となっています。)

1.今回取得した住民票、戸籍の附票、保管していた過去の住民票

⇒②~⑤の履歴を証明します。

2.不在籍証明書・不在住証明書

⇒「ここにAさんの本籍はありません、Aさんはこの住所に住んでいません。」という公的文書です。登記簿上の住所で不在籍証明書・不在住証明書を取れば、登記簿上の住所にAさんはもうおらず、登記名義人のAさんと登記申請人のAさんが同一であることを、いわば消極的に証明するものです。

3.上申書

⇒法務局に対して「登記名義人であるAは私で間違いありません」ということを上申するもので、実印を押印し、印鑑証明書を添付して提出します。上申書は、何も書類が無い場合の最終手段と言えます。

※住所の履歴が証明できない場合の必要書類は法定されているわけではなく、法務局が判断しうるに足りる書類を提出することになります。実務上は今回提出したもので手続きできるものとされていますが、手続き前に法務局に確認することをおすすめします。

住所の履歴を公的書類で証明できないと、提出書類が増え、手続きが大変になってしまいます。大した手続きでないと思われがちですが、登記は、住所、氏名で本人かどうかを判断するため、大変重要なものと言えます。やはり「早めに」が一番です。

まとめ

さて、これまで住所氏名変更登記について見てきました。相続登記と併せて、近く義務化されることになっていますが、相続登記の義務化の方が話題になっているため、住所氏名変更登記についてはご存知ない方も多いようです。お引越し等の変更事由が直近の日付の方であれば、比較的簡単に手続きはできますが、だいぶ日が経ってしまっているという場合には、必要書類が多くなる等、難易度が高い手続きとなってしまいます。

現時点では義務でなくても、いずれすることになるのであればこれを機に手続きしよう、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。先延ばしにせず、変更手続きをした方が良いと思いますので、ぜひ、不動産登記のプロである司法書士に相談しましょう。

ご相談がございましたら、ぜひ当ホームページのオンラインサービスをご利用ください。

執筆者:司法書士 高橋 伸光

司法書士事務所あしたば総合法務 代表司法書士。登記手続きをはじめとする、従来の手続代行という枠に捉われず、生前対策や遺産承継業務、また、後見人や財産管理人といった分野に力を入れ、お客様に寄り添う、身近な法律家として活躍している。

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