提携専門家相談事例

飲食店を開業するための許可とは?

先日、ご自宅でお料理教室を主催されている先生から、ご自宅で生徒さんと共同で飲食店を開業したいとの相談がありました。正直、このご時世に飲食業を開業するの?!と思ったのですが、これは私の見識不足であったようです。コロナ禍においても、小さめの店舗スペース(客席15席前後)を上手に活かし、初期投資を最小限に留めながら、新規に飲食店を立ち上げる方のための起業セミナーも盛況のようです。物事の見方・やり方を工夫すれば新しいチャンスが芽生えるという良い例なのかもしれませんね。お料理教室の先生も、家庭的なこじんまりとしたレストランを考えているようでした。

今回は、お料理教室の先生が、生徒さんと一緒に飲食店をご自宅で開業する場合、どのような許可が必要で、どのような事に注意をしなければならないのか?東京都を例に見ていきたいと思います。

飲食店を開業するための要件とは

飲食店を開業するためには、飲食店営業許可が必要です。飲食店営業許可を取得するには、次の要件をクリアしなければなりません。

食品衛生責任者1名以上配置する。

用途地域も含め、営業店舗施設が自治体の定めた基準を満たしている

・許可を得るための申請書類に不備がない

それでは、一つ一つ確認をしていきましょう。

食品衛生責任者の配置

食品衛生責任者とは

飲食店や販売店、食品製造施設など、営業許可施設ごとに1名以上置く必要のあるものです(食品衛生管理者を置く必要のある施設を除く。)。

食品衛生責任者になるためには

1.食品衛生責任者養成講習会修了者
(※ 食品衛生責任者養成講習会を受講すると取得できます。)

東京都内の場合、食品衛生責任者養成講習会は、一般社団法人東京都食品衛生協会が行っています。講習会の日程及び受講に関する内容は、一般社団法人東京都食品衛生協会ホームページをご参照ください。

2.以下の資格者は、講習会を受けなくても食品衛生責任者になることができます。

・栄養士
・調理師
・製菓衛生師
・と畜場法に規定する衛生管理責任者
・と畜場法に規定する作業衛生責任者
・食鳥処理衛生管理者
・船舶料理士
・食品衛生管理者(注1)、もしくは食品衛生監視員となることができる資
格を 有する者
(注1)医師・獣医師・歯科医師・薬剤師または、学校教育法に基づく大学
で、医学・歯学・薬学・獣医学・畜産学・水産学・農芸化学の課程を修めて
卒業した者等。
(詳細は、営業店を管轄する保健所にお問い合わせください。)

食品衛生責任者は、資格がなくても食品衛生責任者養成講習会を受講すれば取得できる!

用途地域と営業店舗の施設の基準

用途地域の確認

飲食店を営業しようとしている場所が、飲食店営業ができる地域かどうかを確認する必要があります。

地域によって飲食営業ができないの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。建物の用途は地域ごとに決められています。これを用途地域と呼び、13地域に分類されます。この地域ごとに飲食店の規模などが制限されますので事前に確認が必要なのです(東京都の「用途地域による建築物の用途制限の概要」)。

今回ご相談の先生のご自宅は、第一種低層住居専用地域にありますが、「兼用住宅で、非住宅部分の床面積が、50㎡以下かつ建築物の延べ面 積の2分の1未満のもの」であれば用途地域の条件はクリアです。

ちなみに、この確認は管轄の保健所ではできません。区・市役所の街づくり課や都市計画課などで確認することになります。詳しくは自治体の窓口にご相談下さい。

店舗施設の用途地域を調べて、営業の可否や店舗規模等に問題ないことを確認しよう!

 

営業する店舗の施設基準

営業許可を受けるためには、施設基準を満たす必要があります。
施設基準には、共通基準特定基準の2種類があります。

共通基準 ⇒ 自動販売機以外のすべての業種に必要な施設の基準
特定基準 ⇒ 業種ごとに定められている基準(今回は飲食店営業の基準)

れでは2つの基準について見ていきましょう。

共通基準

1.営業施設の構造

場所 清潔な場所を選ぶ。
建物 鉄骨、鉄筋コンクリート、木造造りなど十分な耐久性を有する構造
区画 使用目的に応じて、壁、板などにより区画する。
面積 取扱量に応じた広さ
タイル、コンクリートなどの耐水性材料で排水がよく、清掃
しやすい構造(排水のための床こう配は1/50~1/100が適当)
内壁 床から1メートルまで耐水性で清掃しやすい構造
天井 清掃しやすい構造(配管ダクト、照明器具等が露出しないこと)
明るさ 50ルクス以上
換気 ばい煙、蒸気等の排除設備(換気扇等)
ダクトによる屋外排気の場合、近隣に迷惑にならないよう注意する。レンジフードを設置する場合、天井との隙間が無いように直接設置し、外面は垂直にする。
周囲の構造 周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水がよく、清掃しやすい。
ねずみ族、昆虫等の防除 ねずみ族や昆虫などの防除設備
網戸、自動ドア等で防止する。排水溝には、鉄格子、金網等を設置。
洗浄装置 原材料、食品や器具等を洗うための流水式洗浄設備
・シンク(内径)は、45㎝(幅)×36㎝(奥行)×18㎝(深さ)以上
従事者専用の流水受槽式手洗い設備と手指の消毒装置
・手洗い器の外径は、36㎝(幅)×28㎝(奥行)以上
・蛇口は、足踏式、ハンドコック等がよい。
・手指の消毒装置を付ける。
更衣室 清潔な更衣室又は更衣箱を作業場外に設ける。専用の衣服、履物、帽子
を着用させるための更衣施設等があること。

2.食品取扱設備

器具等の整備 取扱量に応じた数の機械器具及び容器包装を備える。
器具等の配置 移動し難い機械器具等は、作業に便利で、清掃及び洗浄をしやすい位置に配置する。
保管設備 原材料、食品や器具類等を衛生的に保管できる設備
食器戸棚、器具保管庫等には必ず戸をつける。
器具等の材質 耐水性で洗浄しやすく、熱湯、蒸気又は殺菌剤等で洗浄が可能なもの
運搬具 必要に応じ、防虫、防じん、保冷のできる清潔な食品運搬具を備える。
計器類 冷蔵、殺菌、加熱、圧搾等の設備には、見やすい箇所に温度計や圧力計を備える。必要に応じて計量器を備える。冷蔵庫内、調理場内には温度計を設置する。

3.給水及び汚物処理

給水設備 水道水又は飲用的と認められる水を豊富に供給できるもの 貯水槽は衛生上支障のない構造。ただし、島しょ等で飲用適的の水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。貯水槽使用水、井戸水使用の場合等は、年1回以上、水質検査を行い、成績書を1年間保存すること。
便所 作業場に影響のない位置及び構造で、従事者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫などの防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける。手洗い設備は従業員専用手洗い設備と同じ。床には排水溝を設ける。汲取口、浄化槽のマンホール等が食品取扱施設に影響しない場所にあること。
汚物処理設備 ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れないもの。ハエ等の衛生害虫の侵入、繁殖を防ぐため、汚液、汚臭がもれ ないものであること。
清掃器具の格納設備 作業場専用の清掃器具と格納設備

 

特定基準

飲食店営業

冷蔵設備 食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。
洗浄設備 洗浄槽は、2槽以上とすること。ただし、自動洗浄設備のある場合又は食品の販売に付随するものであって、当該食品の販売に係る販売所の施設内の一画に調理場の区画を設け、簡易な調理を行う場合で衛生上支障ないと認められるときは、この限りでない。
給湯設備 洗浄及び消毒のための給湯設備を設けること。
客席 客室及び客席には、換気設備を設けること。客室及び客席の明るさは、10ルクス以上とすること。また、食品の調理のみを行い、客に飲食させない営業については、客室及び客席を必要としない。なお、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律又は旅館業法の適用を受ける営業を除く。
客用便所 客の使用する便所があること。ただし、客に飲食させない営業については、客用便所を必要としない。なお、客の使用する便所は、調理場に影響のない位置及び構造とし、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫等の侵入を防止する設備を設けること。また、専用の流水受槽式手洗い設備があること。

東京都の場合、飲食店営業の基準は上記の通りです。部分的にざっくりとした表現もあり、分かりにくいところもあると思います。加えて管轄する自治体(市区町村)により、審査の厳しさのポイントが異なる場合があります。

営業の内容、営業施設の構造(工事着工前)、営業設備等が概ね決まった時点で、一度、管轄の保健所に計画概要の確認をしてもらいましょう。設備購入後や工事完了後に確認をした場合、大きな修正を余儀なくされる場合もありますので、事前確認を慎重に行うことをお勧めします。

施設基準には共通基準と特定基準があり、基準が細かく定められている。
営業内容や店舗施設の概要が決まったら内容を保健所で確認してもらおう!

申請時の必要書類

 

【個人の場合】

1.営業許可申請書 1通
2.営業設備の大要・配置図 2通
3.許可申請手数料(管轄する保健所にお問い合わせ下さい)
4.水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
(※許可後も、年1回以上水質検査を行い、成績書を保管すること)
5.食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)

 

【法人の場合】

1.営業許可申請書 1通
2.営業設備の大要・配置図 2通
3.許可申請手数料(管轄する保健所にお問い合わせ下さい)
4.登記事項証明書 1通
5.水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
(※許可後も、年1回以上水質検査を行い、成績書を保管すること)
6.食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)

申請書類は記載漏れや誤記入がないよう正確に記載しましょう。
特に、2.営業設備の配置図は寸法など細かく記載する必要があります。
設計図面などを転用することをお勧めします。

~東京都 食品関係営業許可申請の手引き 営業設備の配置図記載例より~

 

まとめ

今回は飲食店営業許可を取得するための大事な要件についてお話をしました。

・食品衛生責任者を、営業店舗施設ごとに1名以上置く。
・営業店舗施設の用途地域と施設基準の条件を確認する。
 施設基準については、保健所で事前にしっかり確認!
・申請書類は記載漏れや誤記入がないよう正確に。

 

まずはこれらの要件を踏まえて申請の準備を進めましょう。そして、申請内容(食品衛生責任者、営業内容、営業所の場所、営業設備など)の概要が固まったタイミングで、管轄の保健所にアポイントを取って必ず事前相談に行くことをお勧めします。

 

執筆者:行政書士 曽山 満

行政書士事務所を平成26年1月に川崎市にて開業。許認可業務(古物商、飲食業、宅建業など)、国際業務(ビザ申請、帰化など)が主力業務。相談のしやすさときめ細やかなサービスには定評があり、多方面から相談・依頼を受けている。

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