提携専門家相談事例

大切な財産を誰に任せる? ~「あなたになってもらって良かった」と言ってもらえる後見人を目指して~

成年後見制度について

みなさん、こんにちは。司法書士事務所あしたば総合法務の代表司法書士の高橋伸光です。
私は、司法書士として、成年後見業務に力を入れて取り組んでおりますが、みなさんは 「成年後見」をご存知でしょうか?

成年後見とは、認知症、知的障害、精神障害などによって、判断する能力が欠けているのが通常の状態の方について、申立てによって、家庭裁判所が「後見開始の審判」をして、本人を援助する人として成年後見人を選任する制度です。

成年後見人は,後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり、本人の契約を取り消したりすることができます。このように幅広い権限を持つため、後見人は、本人の財産全体をきちんと管理して、本人が日常生活に困らないように十分に配慮していかなければなりません。

(引用:最高裁判所 裁判手続 家事事件Q&A)https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html#qa_kazi53

お元気なうちに、後見人として今後のことを任せたい人と契約をしておく、 「任意後見」という制度もありますが、今ご紹介しているのは、実際に判断能力が欠けた場合に家庭裁判所で選任する、「法定後見」の制度です。

後見人には誰がなるの?

この後見人になるには、特別な資格は要りませんので、親族がなることもできます。
一般的には、候補者を立てて裁判所に選任の申立てをすることで、その者が適任か裁判所で判断することになります。

しかし、あくまでも、決めるのは裁判所なので、必ずしも候補者がそのまま選任されるとは限りません。

例えば、親族間でトラブルがある案件では弁護士、預貯金や不動産等の保有財産が多い方の案件では司法書士、介護の体制を整える必要がある案件では社会福祉士といったように、ご本人にとって必要な対応を考慮し、専門家が就くべきと判断されれば、候補者とは別の者が選ばれることもあります。

後見人候補者推薦の流れ

お独りの方はもちろん、親族がいらっしゃる方でも、様々な理由からその方が後見人になることが難しく、知り合いに専門家もいないため、候補者が見つからないということも少なくありません。

また、親族を候補者として申し立てたが、ご本人の状況から専門家を就けるべきと判断され、別の候補者を立てるケースもあります。

では、そのような場合に、どのような流れで候補者が決まるのでしょうか?私の事務所のある神奈川県で、司法書士が適任と判断された場合の流れを見ていきましょう。

司法書士には、公益社団法人成年後見リーガルサポートという、後見業務を取り扱う有志の全国の司法書士によって設立された関連団体があります。

https://www.legal-support.or.jp/

候補者推薦の流れ

リーガルサポートが主催する研修を受け、後見人になるのにふさわしいとされた会員が、家庭裁判所の推薦名簿に登載することができるようになります。
リーガルサポート神奈川県支部の事務局は、家庭裁判所から適任者を推薦して欲しいという依頼が来たら、その文書を名簿登載会員だけが閲覧できるサイトに掲載します。会員は、担当してみたいと思う案件があれば、申し込みます。(待っていれば順番に回ってくるわけではありません。)
申し込みが重なった場合は、後見事件の受託件数や地理的要件等、総合的に勘案して候補者となる会員を選定します。推薦がされれば、家庭裁判所はまず間違いなくその会員を選任する、という流れになっています。
補足 会員がホームページで閲覧できる推薦依頼は、個人情報はマスキングされていますが、一般案件や困難案件、少資産案件といった種類に分類され、ご本人の状況、地理的情報、注意点といった概要を確認することができ、申し込むかの判断材料にすることができます。あえて難しい案件に手を挙げる人は少ないのですが、その件に申し込み、選ばれれば、次の別の申し込みの際に優先して選んでもらえる、といった工夫がされています。

司法書士の営業

さて、話は変わりますが、司法書士の仕事として思いつくものはありますか?多くの方が不動産や法人の「登記」が頭に浮かぶのではないでしょうか。

私は、司法書士登録してかれこれ10年になりますが、登録当初は、やはり登記の仕事をもらいたく、不動産業者、金融機関、士業に営業をし、交流会にも積極的に参加して人脈を広げようとしていました。
それでも、当然、すでに仕事をお願いしている司法書士がいるのがほとんど。なかなか自分で仕事を取ることがなかなかできない状態が続きました。

そんななか、今から7年ほど前にある方の後見人に就いたことがきっかけで、後見業務にやりがいを感じ、力を入れて取り組むようになりました。
そこで、先ほどの家庭裁判所からの推薦依頼の仕組みを知り、対応エリアに問題なければ、言い方は悪いですが、「手あたり次第」申し込み、多い時で年間4、5件選ばれていたかと思います。

亡くなられる等で終了した案件も多いですが、今でもお手伝いさせていただいている方もいらっしゃり、ご本人のためにできる限りのことをやる、という意気込みは当時も今も変わりません。
ただ、新人司法書士のなかには、私のように、社会貢献にもなる大事な仕事という建前と、定期的な収入が見込まれ、登記案件より競争が少ないといった本音の間で葛藤しながら、後見業務に携わる人も少なくないのでは?と思っています。

まとめ

誰が後見人になり、自分や家族の財産の管理を任せることになるかは、制度を利用されるみなさまにとって最大の関心事だと思います。司法書士は、今や専門職後見人として、弁護士や社会福祉士よりも多く選任され、後見の専門家としての認知度が高まっていますが、司法書士だからというだけで信頼して良いものか、と思われる方も多いかと思います。

私自身、多くの案件に携わらせていただいておりますが、業務をするなかで、一番嬉しいのは、「あなたになってもらって良かった」の一言をいただいたときです。大げさではなく、涙が出そうになり、力が湧いてきます。

ご紹介してきたように、後見人が決まる過程にはいくつかありますが、どのような場合でも、私が後見人をさせていただくことになったら、全ての方にそう言ってもらえるように、ご本人や関係者に信頼していただける言動を取ることを心がけています。

今後も、私自身の経験をもとに、実務の裏側をざっくばらんにご紹介しつつ、後見制度について理解を深めていただき、利用の促進につながるような記事を書いていきたいと思います。

この記事をご覧の方は、「マネー」に関して興味がある方が多いかと思いますが、後見制度は、後見人に財産管理を任せるという、将来のご自身、あるいは、今現在のご家族の「マネー」に関係しますので、必ず知っておいて欲しい制度になります。
ご相談がございましたら当ホームページのオンラインサービスをぜひ利用してみてください。

執筆者:司法書士 高橋 伸光

司法書士事務所あしたば総合法務 代表司法書士。登記手続きをはじめとする、従来の手続代行という枠に捉われず、生前対策や遺産承継業務、また、後見人や財産管理人といった分野に力を入れ、お客様に寄り添う、身近な法律家として活躍している。

 

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