こんにちは、ファイナンシャルプランナー(FP)の大熊雅貴です。
前回『FIRE』について早期退職との違いを中心に書きました。今回は『FIRE』したい人が計画するときに考える2つのルールについて書いていきたいと思います。
※前回の記事で『FIRE』について早期退職との違いを解説していますので、ご覧になっていない方はぜひチェックしておいてください。
FIREを目指すためには、早くから経済的な目標を立てて、自分の引退年齢を自身で決定するビジョンを持つことが必須となります。また、きちんと生活設計を立てて計画的に資産形成を実行していく『マネープランニング』が必須です。そのマネープランを立てる時期は、思い立った『今』が最良最速のときです。そのビジョンとマネープランニングを立てるうえで、昨今の書籍などで一般的に言われる重要なポイントは以下の2つです。
- 「25年分の生活費の確保」
リタイア生活を送るために必要な生活費を300万円と考えた場合、『7,500万円(300万円×25年)を貯めればFIREできる』と計算し、目標金額を考える場合の基本ルール - 「4%ルール」
リタイア後の生活費を投資元本の年4%以内に抑えることで、30年以上資産寿命を延ばすことを考える場合の基本ルール
できるだけ“簡単に・分かりやすく”ご紹介したいと思います。あくまで筆者の個人的金銭感覚で書いている部分がありますので、収入・支出・インフレ等の細かいご説明は一部省きますのでご容赦くださいm(__)m
「25年分の生活費の確保」とは
2020年の総務省統計局『家計調査二人以上の世帯)2021年2月5日公表によると、消費支出平均は約23.3万円/月という結果が出ています。これをもとに、仮に月額25万円が必要な方の場合、年間300万円の支出となります。この支出の25年分を確保する場合、FIREで必要な資産は【300万円×25=7,500万円】となります。
必ずご自身の生活に落とし込んで、生活費がいくら必要か計算しましょう。
ここで疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
年間の生活費の25年分だと、25年しか生活が持たないんじゃない?と。
つまり45歳でFIREした場合、70歳以降はどうするの?と心配される方もいらっしゃるでしょう。
ここで計算した年間生活費の25年分は生活費ではありません。
FIREした後の生活費を、投資などの不労所得で賄っていくための元本として、年間生活費の25倍の資金をリタイヤするまでに準備しましょうという事です。
「4%ルール」とは
もう一つの「4%ルール」ですが、これは先ほどの「年間生活費の25年分」の資金を運用しながら「生活費を投資元本の〇%以内に抑えることで資産を〇年後まで維持できるか」という理論で、「William Bengen 氏の研究論文」と米国トリニティ大学の研究論文「Trinity Study(トリニティ・スタディ)」の2つの論文が元になっています。
この2つについては機会があれば別の記事でご紹介と解説を致しますが、ざっくり言うと「資産を運用しながら生活費を取崩し、30年後に当初資産の10%を残せる確率」が論文のなかで書かれています。
トリニティスタディの研究
米国トリニティ大学の教授3名により1998年に発表された、「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable(=リタイア後の貯蓄:持続可能な引き出し率の選択)」という論文を根拠にして導かれたルールです。
資産運用をしつつ、毎年一定割合のお金を引き出していった場合、資金が底を付かないでいられる割合を調べています。
出典:“Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable”
ただし、今となっては20年前までのデータですのでその後に起こった2000年のITバブル崩壊にはじまり米国同時多発テロ、リーマンショック、ギリシャ債務危機など…様々な事件事故が反映されていません。
2018年発表のWade Pfau博士の研究
そこで、Wade Pfauさんという方がさらに2017年までのデータを取って再度シミュレーションした、トリニティスタディ研究をアップデートしたものが2018年に発表されました。
出典:The Trinity Study And Portfolio Success Rates (Updated To 2018)
データの新しいこちらの研究の中から、以下の条件を抜粋してグラフを作成してみました。
- シミュレーション期間:「1926年~2017年のS&P500および中期国債」
- ポートフォリオ:株式100%、株式50%債券50%、債券100%
- 取崩し率:3%~10%
運用資産の3%を毎年取崩す場合は、3つのポートフォリオはどれもおおむね30年後までお金が底を付きません。しかし、4%取崩しの場合は運用の方法で結果が変わってきます。資産を『株式100%で運用』した場合や、『株式と債券を50%ずつで運用』した場合は、30年後まで100%~94%の確率でお金が底をつかない計算になっていますが『債券100%で運用』した場合はお金が底をつかない確率が44%↷となっています。
【株式100%:債券0%】で、取り崩し【4%】なら、成功確率【94%】
【株式50%:債券50%】で、取り崩し【4%】なら、成功確率【100%】
【株式0%:債券100%】で、取り崩し【4%】なら、成功確率【44%】
一方、資産の5%以上を引き出すと、30年後に資産が残っている確率が高くても78%に減ってしまいます。こういったデータをふまえ、FIREでは資産運用しつつ4%の資産を取り崩すことを『4%ルール』と言われています。
たとえばリタイアした時に、運用資産が1億円あるとします。その運用資産から、毎年4%分(400万円)を引き出しても、30年後までお金がつきないということです。
1億円なくても『FIRE』できる!…かも
ポイントは『資産を株式で運用する』
では『年間生活費の25年分』を運用しながら『毎年4%取崩し』をしていけば大丈夫かというと、もちろん100%ではありません。あくまで過去91年のデータであり、今後が同じということはありません。また、グラフを見ても資産寿命を30年以上持たせるためには、保有する資産の50%以上は株式で運用する前提となっているため株式と債券の割合をどうするか、S&P500というアメリカの株式だけで考えてるのかなど、様々な要因を考えなければいけませんが、細かいお話はまたの機会にします。
とりあえず細かい点は置いといて、じゃあ結局いくら準備しないといけないの?と考えた場合、先ほどの2つのルールをふまえ【月25万円×12ヶ月=年300万円】をベースに考えると7,500万円必要ということになります。
…やっぱり私には無理…(-_-;)と考えた方!まだもうちょっと待ってください。
まず、FIREは海外発祥の考え方ですので、先ほどの2つのルールはリタイヤからずっと25万円取り崩していくことを前提としています。ですが、日本でFIREを考えた場合、強い味方になるのが『公的年金』です。
従来のアメリカ式のFIREのイメージと、公的年金を踏まえた【日本版FIRE】のイメージはこんな感じです。
アテにはできないかも…けれど頼りになるのは「公的年金」
そう、『公的年金』があれば、ずっと25万円取り崩さなくても良さそうじゃない?
ただし、皆さんはご自身の年金がどのくらいの額が見込めるか、計算されたことはありますでしょうか?
現実から目をそらすのはやめましょう(^^)
ほとんどの方が計算されたことが無いかも知れません。ですが『FIRE』を考えるうえで「公的年金がいくらもらえるのか」は大変重要なポイントになりますので、FIREしたい方は必ず調べましょう。
以前の記事で『ねんきん定期便』でわかること、「私のもらえる年金はいくらなの?」を『ねんきん定期便』を使って試算する方法を解説していますので、ご覧になっていない方はぜひチェックしておいてください。
ここで確認して頂きたいのが、『早くリタイヤしようとすると、もらえる公的年金も減る』ということです。つまり、早くFIREしようとすればするほど準備するべき資産が大きくなるということ。
そこで、次回は【公的年金をふまえた日本式FIRE】について書きたいと思います。
終わりに
いかがでしたか?『FIRE』するにはざっくり1億円!というイメージをお持ちかも知れませんが、公的年金を考慮すると準備資金はもっと少なくても大丈夫かもしれません。
そのリアルな額を知る一歩として、FIREしたい方は、まず「自分が公的年金をいくらもらえるのか」を必ず調べましょう。
❶2つのルールが基本 ❷公的年金を確認
❸リタイヤ後は資産の50%以上を株式で保有
次回のテーマは、【公的年金をふまえた日本式FIRE】〇歳でFIREするなら、公的年金をふまえるといくら必要なのか?などを中心に書いていきたいと思いますのでお楽しみに!
【日本式FIRE】公的年金を味方にして、○○歳で○○○万あれば大丈夫!
もし『FIREするためのマネープランニング』に興味を持たれた場合は、ぜひファイナンシャルプランナー等専門家に相談して、あなたの働き方・収入・考え方にあったアドバイスを受けてみましょう。
ぜひお気軽に、私たちのオンライン相談サービスもご利用ください。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 大熊 雅貴
ライフプランのお金の見直しから住宅購入計画、年金・貯蓄の相談など、毎年150組を超えるご相談を受ける。自身の経験から得たノウハウとともに“かしこく生きる”アドバイスをしている、子育て世代のお金の悩み専門のファイナンシャルプランナー。