こんにちは、ファイナンシャル・プランナー(FP)の早坂朋恵です。
私がオンライン相談をお受けした時の具体的事例をご紹介します。是非、ご参考ください。
ご相談者プロフィール
お名前:Tさん
家族構成:夫57歳、妻55歳、長男19歳(大学1年)、次男16歳(高校1年)、母85歳(同居)
お住いの地域:北海道
居住形態:持ち家(戸建て)
職業・収入:夫 会社員 800万円、妻 会社員 470万円
保有金融資産:普通預金1,000万円、財形年金、個人年金、養老保険
※個人が特定されることを防ぐため、ご家族の年齢や資産状況などは改変しています。
ご相談の経緯
定年退職が3年後に迫り、出張続きの生活がコロナ禍で一変したことで将来を考えた時、今後のお金のことがふと心配に。投資、運用という言葉が耳に入ることも多くなり、気にはなるけど経験もないし一体どうしたら・・時間の取れる今やっておかなければとオンラインでのご相談になりました。
具体的な相談内容は、以下の通りです。
・退職を3年後に控えており、老後資金が不安。退職金も会社の合併等あり思ったほど貰えなさそう。投資をしてお金を増やすことが必要とは思うが、全く経験がなくどこから手を付けて良いのか分からない。
・勤務先に企業型DCがあるが、当初から元本確保型(定期預金)のまま。あと数年でも運用商品を変えた方が良いのかどうか。
ライフプランシミュレーションで将来を見通す
Tさんの場合、ご夫妻とも60歳定年後65歳まで再雇用で働ける見込みとのことでしたが、一方で、まだお子さん二人の教育費も掛かることや同居のお母様の将来の介護等ご心配事も多かったので、先ずは現状と今後の収支見通しを目に見える形にし、投資や運用をどの程度取り入れるべきかを検討することとしました。
書き出すだけでも整理になる
通常対面のご相談では、こちらから色々とご質問をしてお答えいただき、必要に応じて運用レポートや保険証券等を確認させていただくのですが、今回はオンライン相談であったため、質問シートをご本人に記入いただき送り返してもらった後、内容を確認しながらキャッシュフロー表等を共有させていただきました。
Tさんによると「書くのはけっこう大変だった」通帳や給与明細、保険証券を並べて奥様と収支の現状について確認したり、そしてまた退職後の生活、実現したい事について話し合ったり・・大変な一方将来をイメージする良い機会にもなったようです(退職記念の夫婦旅行もしっかり盛り込まれていました)。
資産運用の取り入れ方
Tさんの場合、65歳まで働けることや個人年金、財形年金等の準備を若い内からしていたこともあり、退職後も前半は概ね理想通りの生活が送れそうでしたが、キャッシュフロー表では90代半ばで資産寿命が尽きる状況だったので、無理のない範囲で資産運用を取り入れることにしました。
50代でもiDeCoの利用価値は大きい。法改正の後押しも。
奥様の会社には企業型DCがないので、先ずは税制メリットの大きいiDeCoを奥様に利用いただくことにしました。
iDeCoに関しては、法改正により2022年以降は拠出可能期間が現在の「60歳まで」から「65歳まで」に延びることが決定しています。国民年金の被保険者であることが前提になりますが、奥様の場合には65歳まで現在の勤務先で厚生年金適用となる予定であることから、55歳の現在から10年間は拠出が可能となります。
具体的な節税額は?
仮に上限の月額2万3,000円を拠出した場合、10年間で合計276万円を税制優遇を受けながら運用することが出来ます。
節税効果は収入・所得によって変わるのですが、所得税率10%と仮定すると、住民税10%と合わせて10年間で55万2,000円もの効果となります。金額として大きいのはもちろんですが、初めての資産運用にも取り掛かりやすい
一方でiDeCoには一定の手数料が掛かるので、手数料が低い金融機関を選んで資料請求をしてもらいました。運用商品については、運用期間や全体の資産に対する割合等を考慮しリターン・リスクの特性をお伝えしながら選んで行きますが、今回は初めての投資であることから、バランス型の商品で始めることにしました。
因みに、ご主人の企業型DCについても拠出が終了後も70歳までは運用継続が可能なことを確認し、元本確保型の定期預金からバランス型の投資信託へ変更をされました。
毎月の積立預金分をつみたてNISAへ
ほかに、T様は毎月5万円の積み立てを定期預金でされているとの事でしたので、資金の一部をつみたてNISAを活用した投信積立に替えることにしました。
つみたてNISAは非課税期間が20年間あるので、働いている間はもちろん年金生活になった後もゆとりがある間は積み立てを継続していただく、若しくは積み立てをストップした後も運用を継続いただくことで、老後の後半の準備を、時間を味方に付けながら続けることが出来ます。
お子さんの教育資金は今ある預貯金等の流動性資金で賄えると考えられますが、iDeCoと違い、必要な時にはいつでも取り崩しが出来る柔軟性もメリットの一つであると言えます。
キャッシュフロー表の改善
今まで触れましたiDeCoの活用、企業型DCの運用商品の変更、定期預金から投信積立(つみたてNISA)へと資産運用を取り入れたことで、生涯のキャッシュフローが数百万円改善し、長生きした場合にも安心な見通しとなりました(運用商品の年率は3%前後と想定)。
初めは投資信託という運用商品に対して不安をお持ちだった奥様も、分散・積立の効用に対するご理解もいただき、資産寿命の延びを目で見ていただいた事で、むしろ楽しみが増えたと言ってくださいました。
キャッシュフロー表についてはご自身で作成することも可能ですが、税制や社会保障等も踏まえた詳細なものについては、FPにご依頼いただきアドバイスと共に確認いただくのが、より安心と思います。
※まずご自分でという方は、日本FP協会のサイトにひな型があります。
→https://www.jafp.or.jp/know/fp/sheet/
定期的に保険の確認を
退職前後は収支以外にも、お子さんの独立や社会保障、勤務先の福利厚生制度の適用等変化することが出て来ますので、生命保険についても適切な保障内容になっているかどうか、確認をお勧めしています。
T様の場合、死亡保障は勤務先の共済を利用していらっしゃり、お子さんの独立年齢を考えるとこちらは問題ないと判断しました。一方で医療保険が終身・養老保険の特約として複数加入があるのと、ガン保険が20年以上前に加入したものであることが気になりました。
保険は若い時に入ったものが安くて有利と思いがちですが、特に医療関連の保険については治療方法の変化等に合わせて商品も変化しており、いざ使いたいときにきちんと保障されるかを先ず確認し、次に保険料が適正かを見て行きましょう。
ガン治療で言いますと、以前よりも入院期間が短くなっており、一方で化学療法(抗がん剤、ホルモン剤等)や放射線による治療を通院で行う場合が多くなっています。長期に亘る場合には費用負担も大きくなりますが、加入の保険によっては思うように給付金が受け取れなかったというケースもあります。
T様の場合は元々の保険も残しつつ、足りない部分を新しいガン保険でプラスすることでカバーをしました。保険料については重複した医療保険を整理することで捻出できましたので、全体の支出を増やさずに済みたいへん喜んでいただきました。
ガンについては特に医療技術の進歩が目覚ましい分野だけに、健康診断のように定期的なチェックをお勧めします。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
今は様々な情報が直ぐに手に入れられる時代ですから、お金についても「気になるワード」が皆さん沢山おありのことと思います。
ただ、いざ自分にとってどれが良いかとなると、なかなか判断が難しいのが現状ではないでしょうか。
その方その方の環境に応じてライフプラン、マネープランをサポートするのが私たちFPの役割です。
皆さんの将来の可能性、そして時間の有効活用のために、プロの力を一度活用してみませんか?
(執筆者:ファイナンシャル・プランナー 早坂 朋恵)