〜節税保険バレンタインショックから2年〜
今回の内容は決定事項ではありません。実際の税制改正は今後のパブリックコメント等を注視して頂きます様お願い致します。
経営者、オーナー企業の皆様こんにちはFPの河野です。
今回は上記記載の通り、『名義変更プラン』についてついに国税庁がメス!ということでそのことについて少し触れていきたいと思います。
私は個人のライフプランニングはもちろんですが、法人分野についても関わる事が多かった為、今回のテーマに致しました。少しでも経営者の方に役に立つ情報を発信できればと思っております。
バレンタインデーショックから2年。今回はホワイトデーショック!!
2019年2月、国税庁がいわゆる傷害保障重点型の節税保険に待ったをかけたバレンタインショック。まだ、経営者の方なら記憶に新しい事と思います。更に今回は3月14日に同様の速報が流れホワイトデーショックとも呼ばれております。
※そもそも名義変更プランとは何なのか?は長くなってしまいますので詳細は次回に記載したいと思いますが簡単に後での『名義変更プランの問題点』で少し触れます。名義変更プランについてはたくさんの士業の方も記事にしておりますのでそちらを参考にされるのもいいかと思います。
今回対象になったのは、低解約返戻金型の定期保険(主に逓増定期や定期保険)における名義変更プランの取扱になります。
とりわけ最も業界を驚かせたのは名義変更プランの遡及適用になるとの見込みについてです。
その一文がこちら・・・
「法人税通達9−3−5の2に基づき資産計上されている契約(2019年7月8日以降締結した契約)につき、今回の改正日後に名義変更を行った場合に適用する事を想定」
この一文があった事に私への問い合わせも急増しました。ただ私の場合は法人様とのお取引は過去もしておりますが、この名義変更プランについてはいつかメスが入ると予想しており、説明を求められる事はありましたが一度もご契約を締結した事はございません。
なぜこの一文が驚いているのか。上記の通り、2019年2月の節税保険を始め過去何度もあった税制改正の際に遡及適用される事はほぼなかった為、改正されるまでは駆け込みで契約を結ぶのが業界の通例であったのです。それが今回は過去にも遡及適用する!との事で驚きが広がっているのです。
実は2019年の改正後の法人税通達から続いている
実際、今回の名義変更プランについては、突然行われたものではなく前回のバレンタインショックから続くものであります。
国税庁には19年の節税保険だけではなく、名義変更プランにについても対策を行う必要があるのではないかとの意見は多数寄せられておりました。
それに対して国税庁は「そういったご意見のような保険商品やその利用実績も含め、保険商品全般の実態を引き続き注視し、必要に応じて取扱の適正化に務めたい」とコメントしております。
つまり、先程注意点に記載した2019年7月8日というのは改正後の法人税通達が適用された日付となっており、今回の名義変更プランに対する税務取扱もこの延長線上にあると私は考えております。
問題視する現行制度のポイント
問題視する現行制度のポイントは一体何なのか。
・法人から役員に保険契約の名義変更を行った場合、名義変更時に受け取れる解約返戻金が評価額となり、その解約返戻金に対して給与所得で課税する事になっております。
👉ここまで聞くと妥当じゃない?と思うと思います。
ただ、将来多額の解約返戻金の受け取れる低解約型の保険契約について、解約返戻金の低い期間に名義変更をする事は想定されていない為、低い解約返戻金で評価する事は不適当だというものです。
※低い解約返戻金で評価をするという事は、名義変更時の低い解約返戻金で給与所得の課税対象になるのでほぼ課税されないという事になります。
この事を少し触れると解約返戻金が低い期間である4年目に法人から個人(役員)が買取(名義変更)、解約返戻金が跳ね上がる5年目に個人(役員)が保険料を1回だけ支払って、その後に保険を解約するのが一般的なながれです。
個人(役員)としては1回の保険料の支払いで多額の解約返戻金を受け取る事が出来、更に一時所得として扱われる為、所得税の負担を抑えつつ資金の移転が可能となる。
一時所得=(収入金額ー必要経費ー50万円)×1/2
更に法人側は4年間に支払った保険料よりも低い解約返戻金で個人に譲渡する為、その差額が法人の損失となる。つまり、その分利益の圧縮となり法人税の支払いを減らせるという仕組みであります。
今後の改正ポイント(案)
以上の事を踏まえ最後に今回の税務取扱の見直しの内容について触れたいと思います。
先程触れた低い解約返戻金で評価をする。ここが改正のポイントになります。
実際今、改正ポイントをして上げらせているのでが、解約返戻率の高い保険契約についての法人税の取扱は、期末時点での価格を評価し、法人資産に計上するという見直しが行われております。
つまりは、解約返戻金が低い期間に解約返戻金の高い保険を名義変更した場合には法人の資産計上額で評価しようというものです。
解約返戻率の高さはの線引きは、解約返戻金が資産計上額の7割相当額かどうかで決まります。7割未満であれば資産計上額で評価する事となり、7割以上であれば見直しの対象外とされております。
このことを踏まえると従来の名義変更プランはほとんどのケースが7割未満の資産計上額での評価になると個人的には予想しております。
いかがだったでしょうか。先の注意点でも触れておりますが今回の改正ポイントはまだ決定事項ではありません。詳細は今後出てくるであろうパブリックコメントや税制改正をよくよく注視して頂けると幸いです。正式決定した際にはもちろんこの記事でも触れていこうと思います。
いずれにしましても、今回最大の焦点はやはり遡及適用の所になるでしょう。
改正後の法人税通達が適用された2019年7月8日以降の保険契約、今回改正が予定されている2021年6月末以降の名義変更を行った契約。ここがポイントとなりそうです。
(執筆者・ファイナンシャルプランナー 河野 靖史)
大手生命保険会社に就職後、1社専属商品だけではお客様のニーズには合致が困難と大手総合金融会社に転職。大手総合金融会社での経験を経て現在は独立系FPとして現在の会社に所属。担当顧客400人を超え、法人実務経験も豊富に持つ。