先日、古物商を営んでいるお客様(法人の代表取締役)から相談を受けました。内容は、お客様がお引っ越しをされたことに伴い、管轄の警察署(正確には管轄の公安委員会)に申請している代表取締役の住所の変更手続きをお願いしたいとのことでした。最初はご自身で手続きをされようとしたようですが、手続きの期限を過ぎていたため、警察署から理由書(いわゆる始末書)も届出書類に添付して提出することを指示されたようです。そこで当事務所へ相談に…。
実はこのようなケースは珍しくはありません。古物商許可を取得した後、申請している内容に変更が生じているのに変更手続きを取っていない方がいらっしゃいます。古物商許可は有効期限(更新)が無いので、手続きが放置されやすいという側面もあるようです。
今回は、古物商許可を取得した際の申請している内容に変更が生じた場合、どのような手続きをいつまでに行う必要があるのか見ていきましょう。
「事前の届出」と「事後の届出」
変更の手続きには、変更する内容によって大きく2つのパターンがあります。
古物営業法施行規則第5条第1項、第2項及び第3項に定める「事前の届出」と、古物営業法施行規則第5条第4号、第5号及び第6号に定める「事後の届出」の2つです。
法律の条文は難しいので、ケースによって「変更する前の届出」と「変更した後の届出」に分かれると覚えてください。
では、具体的に2つの届出について確認していきましょう。
「事前の届出」
「事前の届出」は、主たる営業所又は古物市場その他の営業所又は古物市場の名称及び所在地を変更しようとするときです。例えば、下記のような場合です。
◎複数の営業所があり、主たる営業所を別の営業所に変更する場合
◎営業所の名称を変更する場合
◎営業所の新設又は廃止をする場合
◎営業所の所在地を移転する場合
この場合、あらかじめ、主たる公安委員会(公安委員会の管轄区域を異にして主たる営業所又は古物市場の所在地を変更しようとするときは、その変更後の主たる公安委員会)に届出書を提出しなければなりません(古物営業法第7条第1項)。
「あらかじめ」、つまり事前にということですが、どのくらい前までかと言いますと「変更の日の3日前まで」に届出書を提出する必要があります。また、届出をする場合(古物営業法第7条第3項の規定により届出書の提出を経由して行う場合を含む。)、その営業所又は古物市場(2以上の営業所又は2以上の古物市場を有する者にあっては、当該営業所又は古物市場のうちいずれか一の営業所又は古物市場)の所在地の管轄警察署に提出します。
条文では管轄する公安委員会に提出するよう書いてありますが、許可申請時と同様に、実際には管轄警察署の生活安全課が窓口となりますので、そちらに提出します。
「事前の届出(営業所又は古物市場の名称及び所在地を変更する場合)」は、変更の日の3日前までに届出書を提出する!
事後の届出
「事後の届出」は古物営業法第5条第1項各号(第2号を除く。)に掲げる事項に変更があったときとされています。古物営業法第5条第1項各号(第2号を除く。)に書かれている内容は下記の項目です。
◎氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
◎営業所又は古物市場ごとに取り扱おうとする古物の取扱品目(区分)
◎管理者の氏名及び住所
◎行商の有無
◎ホームページ等の開設
◎法人の場合は、役員の氏名及び住所
これらの項目に変更が生じた場合は、「事後の届出」が必要です。
「事後の届出」をする場合(古物営業法第7条第3項の規定により届出書の提出を経由して行う場合を含む。)、その営業所又は古物市場(2以上の営業所又は2以上の古物市場を有する者にあっては、当該営業所又は古物市場のうちいずれか一の営業所又は古物市場)の所在地の所轄警察署に、変更の日から14日(届出書に登記事項証明書を添付すべき場合にあっては、20日)以内に、変更の届出をしなければなりません。また、変更する項目により添付書類の提出が求められる場合があります。
例えば法人の場合、会社名(商号)・本店所在地・役員の事項に係る変更は変更登記を行った上で、届出書とあわせて登記事項証明書を提出する必要があります。
また、変更内容が許可証の下記の事項に該当する場合は、許可証の書換え(書換申請)も必要になります。届出書を提出する際に許可証も持参し、変更する事項を追記してもらいます。書換申請の手数料は1500円です。
◎営業者の氏名又は名称、住所又は居所
◎法人の代表者の氏名又は住所
◎行商の「する」・「しない」
「事後の届出」は、変更の日から14日(届出書に登記事項証明書を添付すべき場合にあっては、20日)以内に、届出書を提供する!
最後に
今回は古物商許可取得後に、申請内容に変更が生じた場合の手続きについて見てきました。手続きの内容はそれほど難しい話ではありませんが、変更の届出を事前に行う場合と事後に行う場合の2パターンあり、また、それぞれ期限が設けられているので注意が必要です。期限を超過してしまうと、理由書の添付を求められたり、最悪の場合、罰金刑となる可能性もありますので注意が必要です(古物営業法第35条第1項)。営業許可を取得した際の申請内容に変更が生じる場合は、念のため事前に管轄の警察署に確認することをお勧めします。
執筆者:行政書士 曽山 満
行政書士事務所を平成26年1月に川崎市にて開業。許認可業務(古物商、飲食業、宅建業など)、国際業務(ビザ申請、帰化など)が主力業務。相談のしやすさときめ細やかなサービスには定評があり、多方面から相談・依頼を受けている。