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投資信託が急に終わることってあるの?

こんにちは、FP(ファイナンシャルプランナー)の福永涼子です。

かなこさん
かなこさん
6年前に買った投資信託がこの前、急に終わったのですが、そんなことってあるんですか?

銀行で6年前に買った投資信託について、運用状況があまり良くなく損が出続けていたので回復するまで待とうと思い、そのまま運用し続けていたら、いきなり商品が終了するとの連絡があったとのお話。

FP福永
FP福永
はい、そんなことってあるんですよ~。

ではいったい、どのような時に投資信託は終わってしまうのでしょうか。

その前に、投資信託の概要を確認しておきましょう。

投資信託とは


投資信託とは、投資家(投資をしたい人)から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用のプロ(運用会社の専門家)がその資金を使って複数の株式や債券などに分散して投資・運用する商品のことを言います。
その運用成果は、投資家それぞれの投資額に応じて分けられ返ってきます。

※投資信託に関する詳細はこちら(当サイト運営会社FPオフィス「あしたば」の記事)
投資信託とは(初心者向け)

投資信託の運用成果は、市場環境(投資先の状況の良し悪しなど)によって日々変動します。
要は、利益が得られることもあれば、損失が出てしまうこともあるということです。

運用が順調であれば、投資した資金が増えていく(利益が出る)ので、その投資信託が保有する資金(純資産)そのものも増え、それを原資にさらに多くの運用ができることになります。

良い運用ができれば、また投資した資金が増え、その投資信託に投資したいと思う人も増え、さらに投資信託の純資産が増え・・・と、好循環も生まれます。

逆に運用がうまくいかなければ、投資した資金が減り(損失が出る)、その状況が続くと良い運用ができなくなることもあります。

その投資信託の魅力が無くなり、投資したいと思う人が減り、解約する人も増えてくると、投資信託の純資産はさらに減っていきます。

純資産が一定金額を下回ると、運用を続けること(利益を生み出せる良い運用)が難しくなり、その投資信託は終わりを告げることになるわけです。

投資信託には期間があるものと無期限のものがある

投資信託は、あらかじめ運用期間が決まっているものと、そうでないもの(無期限のもの)があります。
これを信託期間といいます。

信託期間ついては、交付目論見書という投資信託の説明書に必ず記載してあります。

*目論見書とは*
目論見書には、交付目論見書請求目論見書の2冊の目論見書があります。
投資信託を購入する前に必ず交付される目論見書を交付目論見書と言いますが、重要な情報が記載されているので、しっかりと目を通して確認することが大切です。
交付目論見書
購入しようとしている投資信託についての重要事項を説明したもので、投資信託を購入する前に必ず投資家に渡されるもの。
請求目論見書
投資家から請求があった際に交付しなければならない目論見書で、ファンドの沿革や経理状況といった追加的な情報が記載されているもの。

信託期間が定められているものについては、その投資信託の運用が期間満了を迎えると、原則、運用が終わります。

投資信託の運用が終わることを償還と言いますが、このケースは期償還」になります。

かたや、信託期間が無期限の投資信託の運用が終わってしまうケースや、信託期間が定められていても事情により期間満了の手前で運用が終わってしまうケースは「繰上償還」と言われます。

運用が続けられなくなるのはどんな時?


投資信託は、運用が上手くいかない状況が長く続き、解約する人も増え、純資産が減っていくと、運用を続けることが難しくなると冒頭でお伝えしました。

では、具体的にはどのような時なのか?というと、実はそれぞれ投資信託の交付目論見書の中の「繰上償還」という項目にしっかりと記載されています。

わかりやすく、投資信託「e-MAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の目論見書の内容を例として見てみましょう。
(※特定の商品を推奨する意図はなく、あくまで一般論として概要を説明するにあたり一例として掲載しています)

この投資信託については、
・受益権の口数が10億口を下回ることになった場合
・対象インデックスが改廃されたとき
・ファンドを償還させることが受益者のため有利であると認めるとき
・やむを得ない事情が発生したとき

上記のいずれかもしくは重複した状況になった時には「この投資信託を終わりにすることがありますよ」というわけです。

では、この中の受益権の口数が10億口を下回ることになった場合について、もう少しわかりやすく説明します。

「受益権の口数」というのは、投資信託の受益者(投資信託に投資している人)が保有する口数のことです。
口数とは受益権を表す単位で、投資信託を購入または解約する際の取引単位としても使われます。

例に挙げた投資信託の場合、それを購入・保有する人が少ないor解約が増えて、総口数が10億口に満たない状況が続いた場合などは、繰上償還になることもありますということです。

繰上償還は、投資信託で一番気づきにくいリスクとも言えるかもしれません。

繰上償還の際のステップ


では、実際に購入した投資信託が繰上償還になるとき、どのように手続きが進んでいくのでしょうか。

お知らせが届く

基本的には、まずお手元に「繰上償還(予定)のお知らせ」が届きます。このお知らせが送られてきた時点ではまだ「予定」です。

お知らせが届いてから一定の期間内(1ヶ月程度)に異議申し立てをすることができ、反対意見の受益者の受益権口数がその投資信託の総口数の2分の1を超えた場合は償還されません。

※2007年9月30日以降に設定された投資信託については、議決権(受益者が受益権の口数に応じて持つ権利)の3分の1を超える反対があった場合に償還されません。

繰上償還になってもOKですということであれば、何もしないでそのまま決定の時期を待っていればよいことになります。

中には、一定の条件を満たした場合に繰上償還を行うことが定められている投資信託もあります。この場合は、受益者の合意なく繰上償還が行われます

繰上償還が決まる

異議申し立てができる期間が終わり、反対の数が一定数に満たなかった場合は、繰上償還が決定します。
※償還されずに運用が続くことになった場合は、新聞紙面やHP上、書面郵送にてその旨が伝えられます。

償還金の案内が届く

投資信託が償還すると、償還金の案内が届きます。
そこには、償還金額、償還金の支払開始日、支払場所などが記載されています。

通常、償還金は証券口座開設時に解約金や償還金の受取口座として登録した金融機関口座に自動的に振り込まれるので、特別な手続きは必要ありません。

もし、振込みが確認できない場合は、窓口の販売会社に確認しましょう。支払い開始日から10年間、請求をしないと償還金の受取り権利を失ってしまいます。

投資信託を選ぶ時のポイント


せっかく、長期でじっくりと資産形成をしていこうと思って投資信託での運用をスタートしても、予期せず繰上償還になってしまうと、意志に反してその投資信託での運用は終了せざるを得ません。

投資運用をする皆さまには、長期目線でじっくりと運用を続けてくれる投資信託に投資をしていただきたいですし、私自身もそういう商品を選びたいと思っています。

運用の目的や性質によっても、投資信託の選び方は異なりますが、繰上償還のように不本意に運用をストップさせられてしまうことは、なるべく避けたいですよね。

FP福永
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長く運用を続けられるか?という視点で投資信託を選ぶ際に、私が少なくともチェックする点は以下のとおりです。

① 純資産総額の規模と推移
投資信託の保有資産の時価合計額が純資産総額、いわゆる投資信託の規模感を表します。
これが小さすぎると十分な運用が出来なくなる(30億円が一つのボーダーラインと言われることが多い)ため、大きければ良いというものでもありませんが、小さすぎるものは避けたいところです。
また、純資産総額がジワジワと減り続けているのも好ましくないですね。

② 運用年数
投資信託の年齢とも言えますが、その商品がスタートしてからどれくらいの期間、運用が継続しているかについてもポイントのひとつです。
良くあるのが「新しい商品が発売されました!」と勧められるケース。
目新しければ良いのか?そこは、ひと呼吸置いて考えてみてください。
まだ運用の実績も無いと、この先どのように動いていくのかは、あくまでイメージでしか判断できません。
かたや、長く続いている商品であれば、その間に起こったあらゆる経済状況の変化(暴落などの危機など)も乗り越えて運用が続いている点は評価の対象になります。
また、その間の運用実績も確認できるため、その投資信託がどういう性質のものなのかを理解する上での大きな材料のひとつにもなります。

③信託期間
文章の冒頭でもお伝えしたとおり、投資信託には信託期間があらかじめ定められている場合と無期限のものとがあります
無期限のものはさておき、信託期間が仮に10年間と定められている商品であれば、最長10年で終わるものという前提で考えておくのが無難です。
ただし、10年の期間終了時に運用状況等をふまえた上で運用を継続した方が投資家にとって有利になる場合は延長が認められているため、実情としては、信託期間が延びる例はよくあります。

④繰上償還条項
目論見書に記載されている「繰上償還」の項目に記載されています。
どのような時に償還になる場合があるのかを確認し、把握しておきたいところですね。

投資信託を選ぶ時には、上記に加えて、投資先資産や運用会社の理念・体制なども確認したいポイントです。

まとめ


現在、日本国内で設定・運用されている投資信託は約6,000本あります。

では、その中でどれを選べばよいのか・・・?
絞り込んでいくのはなかなか簡単なことではないかもしれません。

個人的に、FPとして皆さまにいつもお伝えしていることは、

「投資は長期でじっくり運用すること」
「成長資産である株式の資産を取り入れること」

この2点です。

まず、長期でじっくり運用するためには、長期に渡って存在する投資先(投資信託)が望ましいですね。

そして、成長資産を選べば、将来的にその投資先資産(資産総額)が大きくなっていく=投資家の皆さんの収益も大きくなることも見込めます。

「投資信託で運用を始めてみたい!」と思われている方、
「今の運用は自分に合っているのか?」「今の運用の中身がよく分かっていない」など、悩まれている方、

ぜひ一度、私たちFPのオンライン相談サービスを受けていただければと思います。

私たちは、商品選びの話のみではなく、個々のライフステージや家族構成、運用目的に合った運用方法、マネープランづくりなど、総合的な視点での投資運用アドバイスを行っております。

どうぞ、お気軽にご利用くださいね!

執筆者:ファイナンシャルプランナー・福永 涼子

2001年にFP資格を取得し、FP仲間と共に子供の金銭教育を推進。その後、銀行での運用相談業務を経て現職に至る。自身の経験もふまえた「働く女性やママの視点」での、お金に関するアドバイス&サポートには定評がある。年間約250件の個別相談を実施。

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