成年後見人の報酬
みなさん、こんにちは。司法書士事務所あしたば総合法務の代表司法書士の高橋伸光です。
前回に引き続き、法定後見制度について、私の実体験をもとに事例をご紹介したいと思います。今回は後見人の報酬についてです。
後見人は、家庭裁判所への年に1回の後見事務の報告と一緒に、報酬付与の申立ても行います。報酬額は、ご本人のお持ちの流動資産の額に応じて家庭裁判所が決めることになっており、後見人自ら決めることはできません。横浜家庭裁判所のめやすは下記のとおりです。
(引用:横浜家庭裁判所 後見係)
https://www.courts.go.jp/yokohama/saiban/tetuzuki/kasaikouken/index.html
報酬改定について
2020年6月、最高裁判所が、後見人の報酬に関して、現在の利用者の財産額に応じて決める方法を改め、業務の難易度により金額を調整する方法にし、介護や福祉サービスの契約といった日常生活の支援に報酬を手厚くするという考えを示し、全国の家庭裁判所に通知しました。
しかし、現時点で、少なくとも私の担当させていただいている件では、これまでと同じ金額で報酬の決定がされています。今後の動向に注目です!
実際にあった報酬についての事例
さて、めやすをご覧になって、どうお感じになりましたか?高いと思いますか?
後見人としてではなく後見監督人としてですが、その報酬について、後見人であるお客様と次のようなやり取りになったことがあります。(分かりやすくするため、実際より若干内容を変更しています。)
状況
◎ご本人(被後見人):後見人のお父様(80代)、認知症により5年前から後見制度利用
◎後見人:ご本人の長女(40代)
◎監督人選任の経緯
当初は後見人だけだったが、ご本人の財産が一定額以上あるため、監督体制を強化した方が良いという裁判所の方針により、3年前に私が監督人に就いた。
◎ご本人及び後見事務の状況
当初より健康状態、収支に大きな変動はなく、また、後見人も事務仕事に慣れているため、定期的に提出される報告書の内容はいつも問題ない。
これまで報酬の支払いも滞りなく、金額にもご納得いただいているかと思っていたが、実はそうではなかったらしい!
後見監督人とは
後見人が行う事務を監督するために、家庭裁判所によって選任された者のことを言います。 家庭裁判所は、必要と認めるときは、後見監督人を選任して、後見人に就けることができます。 選任された後見監督人は、後見人が行う事務の内容をチェックし、定期的に家庭裁判所に報告します。
解決方法(報酬減額の申出)
報酬をいただかないわけにもいきませんし、どうしたものかと困りました。裁判所が決めた金額ですので、裁判を起こせば、そのとおり支払えという判決が出るでしょう。ただ、後見人と監督人という、信頼関係を築いてご本人のサポートしていく関係ですので、それを壊してケンカするのはよろしくありません。
また、確かに、定期報告がきちんとされ、監督人として対応したことはそれほど多くなかったこともあり、他の件と同じように報酬をいただいて良いのだろうか、という思いがあったのも事実です。
そこで、その年の報酬付与の申立てを裁判所にする際、私は見合う金額で決定して欲しいと思い、あえてこれまでより減額した金額で決定してもらうことを申し出る文書を一緒の提出しました。結果的にはこれまでの8割という金額になりました。
後見人にはそのように対応したことをお伝えしたところ、金額にご納得のうえお支払いいただけました。その後も、ご本人様がご逝去され、後見業務が終わるまで、良い関係でお付き合いすることができました。
まとめ
専門職後見人の多くは、使命感をもって業務に取り組んでおりますが、それでもボランティアではありませんので、見合った報酬はいただきたいと思っています。管理させていただく財産の額が大きいほど責任も重く、報酬も高くなるのは適切だと思います。ただ、関係者、特にご親族が納得し、良い関係で後見業務を継続していけるということも重要なポイントです。
あえて報酬を下げるような対応をした専門家後見人はそう多くないと思いますが、そのバランスを取るために何らかの対応を取ることはとても大切だと思います。
また、こういった声が届き、業務の難易度に応じて報酬を決める動きもありますので、みんなが納得する方法に変更されることを願っています。
ご相談がございましたら、ぜひ当ホームページのオンラインサービスをご利用ください。
執筆者:司法書士 高橋 伸光
司法書士事務所あしたば総合法務 代表司法書士。登記手続きをはじめとする、従来の手続代行という枠に捉われず、生前対策や遺産承継業務、また、後見人や財産管理人といった分野に力を入れ、お客様に寄り添う、身近な法律家として活躍している。