FP相談事例

【住宅資金計画】自己資金をおさえて住宅ローンの借入額を増やすほうがいい?

こんにちは!ファイナンシャルプランナーの金坂浩之です。

マイホームの資金計画では自己資金として総額の2割を準備するというのが一つの目安といわれています。安全な資金計画を立てる上できちんと自己資金を準備するのは大切なことです。でも、現在の住宅ローン金利事情、住宅ローン減税制度などの優遇制度などを考慮すると、自己資金を手元に残して、借入額を増やすのも選択の一つといえます。相談事例をもとに解説しますので、ご参考下さい。

ご相談者プロフィール

お名前:Sさん
家族構成:夫33歳、妻32歳、長女5歳、長男1歳
お住まいの地域:千葉県
居住形態:賃貸(アパート)
職業・収入:夫/会社員・520万円、妻/会社員・300万円
保有金融資産:900万円(普通預金700万円、定期預金400万円)
住宅予算:3,500万円

※個人が特定されることを防ぐため、ご家族の年齢や資産状況などは改変しています。

自己資金と借入額の検討

まず、試算をしてみることにしました。

試算条件

借入条件は、金利は変動想定で0.7%、借入期間35年、元利均等払い

住宅ローン減税期間は10年

【ケース1】借入額2,800万円 自己資金700万円

【ケース2】借入額3,300万円 自己資金200万円

各ケースの、住宅ローン減税期間10年での減税効果と、10年間の住宅ローン金利負担を試算します。

※住宅ローン減税効果は、源泉徴収票をもとに試算します。

※金利変動により、金利負担額は変わります。

※実際検討する場合は、住宅ローン借入額によって変わる保証料や抵当権設定費用などを考慮しましょう。

試算結果

【ケース1:借入額2,800万円、自己資金700万円】

住宅ローン減税メリット:所得税・住民税あわせて10年間で約240万円軽減

住宅ローン金利負担:10年間で約171万円

【ケース2:借入額3,300万円、自己資金200万円】

住宅ローン減税メリット:所得税・住民税あわせて10年間で約279万円軽減

住宅ローン金利負担:10年間で約201万円

どちらのケースでも、住宅ローンの金利負担よりも住宅ローン減税による効果が大きいという結果でした。住宅購入時に手元の預貯金が減るのはなんとなく不安という方は手元に置いておいてもよさそうですね。そして手元資金での繰り上げ返済はいつでも可能です。

現在の低金利下において住宅ローン減税効果が金利負担より大きい点については、税制改正での検討項目となっていますので、今後の動向については注意が必要です。

では、手元資金を残して借入金額を増やすメリットは?

団体信用生命保険の保障が大きくなる

住宅ローンには団体信用生命保険が付帯されています。借入額が大きいということは大きな保障が得られることになる。私が相談を受けることが多い千葉エリアの地方銀行は、住宅ローン利用者へのサービスが充実していて、死亡保障に加えガン保障が付帯されてたりします。ご自身で加入されている保険の内容の見直しにより、支出の削減につながることもあるかもしれません。

繰上げ返済時に『借入期間短縮』か『返済額軽減』か選択できる

仮に、ケース1(借入額2,800万円)で住宅ローン減税で軽減された税額約240万円を減税期間終了後に繰上げ返済するとします。

『借入期間短縮』を選択すると借入期間が3年2カ月短縮され総返済額(利息支払分)が約42万円削減できます。

『返済額軽減』を選択すると毎月の返済額が8,749円少なくなり、総返済額(利息支払分)が約21万円削減できます。

総返済(利息支払分)を軽減効果は、『借入期間短縮』のほうが大きくなります。

借入当初に短い借入期間を選ぶと後で期間をのばすことはできません。10年経過した時点では、こどもの進路もわかってきているかもしれませんし、そのときの家計状況によって、どちらの繰上げ返済タイプを選ぶか検討することができるのはメリットです。

手元に残したお金で運用するという選択も

手元に残したお金を一気にドカンではなく、毎月分割にて投資したとします。仮にケース①とケース②の自己資金の差額500万円を年率5%で運用できたとすると10年後には約629万円となります。かならずふえるとはいえませんが、投資運用を検討することができます。住宅ローン金利よりも運用による利回りのほうが高ければ、運用を継続してもいいですね。

いずれにしても、住宅ローン減税の期間の10年(13年)を有効に使うことで、その後の選択肢が増やすことができるかと思います。

もちろん、手元にのこして使っちゃうのは本末転倒です。でもあると使いたくなってしまうので、定期預金にしておくとか投資するなど検討し、実行しましょう。

今回のアドバイス

将来のお子さまの教育資金、リタイア後資金準備、そしてできることなら早めにリタイアしたいというご要望がありました。そこで、それを叶える方法、近道の一つとして、今までしていなかった投資運用をマネープランに取り入れることを提案いたしました。

住宅の総予算3,500万円に対して当初は総予算の2割の自己資金を予定していましたが、建築の契約金、諸々の諸費用を考慮して自己資金300万円、借入額3,200万円とすることにしました。

投資運用については、手元に残したお金を10年での分割投資、今までしていた月々の貯蓄の一部を毎月積立する計画をたてました。積立額の設定にあたっては、年金定期便から将来の年金額を計算して、検討しています。投資運用に取り組む目的は、教育資金、リタイア後資金の準備となりますので、投資信託(NISA活用)、確定拠出年金などの制度をバランスよく活用することしました。投資運用を始めてということでしたので、投資運用の基礎情報の提供から、投資計画、実行までサポートし、継続的に経過確認していく予定です。

おわりに

いかがでしてでしょうか。自己資金と借入金額を検討する際のご参考に頂けたら幸いです。

住宅資金計画では、総予算はどのくらいが適正なのか、住宅ローンのこと、税金のことなど、将来の家計全体のことをふまえて総合的に検討することが重要です。住宅購入は、人生の大きなイベントの一つですので、この機会にライフプラン、マネープランについて一度考えてみてはいかがでしょうか。そんなとき役に立つ専門家が、ファイナンシャルプランナーです。

お手伝いできることがありましたら、お気軽にご相談下さい。いつでもお待ちしております。

執筆者:ファイナンシャルプランナー 金坂浩之

千葉県出身 1976年生まれ 1級FP技能士/CFP®/社会保険労務士

大手ハウスメーカー、生命保険会社にて実務、相談経験を積む。相談者一人ひとりのライフプラン実現を支援するコンサルタントとして活動中。

金坂FPにオンライン相談を依頼する