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40代からの老後資金。『iDeCo』と『つみたてNISA』どっちで準備?

こんにちは、ファイナンシャルプランナー(FP)の大熊雅貴です。

2年前に話題になった「老後資金2000万円問題」。当時は大変注目を集めましたが、コロナ禍のせいか「そういえばそんな事もあったよね…」となりつつある昨今。そんな中、30年半ぶり日経平均株価が3万円を突破し、海外株式も順調な推移をしています。新型コロナウイルスがまだ収束を見せない中で、なぜ株価は上昇しているの?と疑問に思いながら資産形成や運用に興味を持った方も多いんじゃないでしょうか?

子育てが落ち着いてきて、定年までの現実的な収入が見えてくる40代。そんな40代の皆さんが老後資産づくりのために気になっているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金、以下イデコ)とつみたてNISA(少額投資非課税制度)という国が用意した2つの資産形成の制度ではないでしょうか?

どちらも金融機関で毎月一定額を積み立てることで“特別な税制メリット”が用意されています。イデコは月5000円から、つみたてNISAは月100円からと、手軽に始められるのも魅力です。

40代以降からはじめるなら、結局どっちがおトク?

ここ1年で、銀行や証券会社などの金融機関から「老後資金を準備するなら」と紹介されることが多くなった『イデコ』と『つみたてNISA』。どちらも『長期・積立・分散』投資の手法を使った資産運用方法ですが、結局どっちがお得かわからず「まだやってない」もしくは「始めたけどよくわからない」という人が多いです。
(『NISA』と『つみたてNISA』についてはコチラで解説

イデコの最大の特徴は、3つの税優遇制度にあります。❶掛け金の全額が所得控除の対象になる、❷運用益が非課税になる、❸受け取る際にも税金の控除を受けられる

イデコは“じぶん年金”をつくることが前提なので、20才以上60才未満*しか加入できず、一度預けたら60才まで引き出せません。(*2022年5月以降、加入可能年齢が65歳未満まで拡大します:国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト参照

❶掛金の全額が所得控除

会社員や主婦は月2万3000円(公務員の方は1万2千円、自営業者は月6万8000円)まで拠出できるイデコ。特にメリットが大きいのは❶の所得控除です。

会社員やパートの方が働いて収入を得たら、その金額に応じて所得税や住民税がかかります。ところが、イデコに掛け金を払うと、その分を収入から❝全額❞差し引いたうえで税金が計算されるので、結果的に所得税・住民税が少なくなります

❷利息・運用益が非課税

イデコは通常なら約20%の税金がかかるところ、❷利息・運用益が非課税で丸ごと受け取れるのも大きいです。

つみたてNISAも20才から積み立てができるのは同じで、“何歳まで”という年齢の上限はなく、いつでも引き出せます。その代わり、非課税メリットとなるのは、この❷の利息・運用益のみです。とはいえ、投資枠の上限は毎年40万円で運用期間は最長20年。40歳から60歳の20年間フルに活用した場合、800万円分が非課税で運用できることになります。

❸受取時に税制優遇あり

❸の受け取り時の税金控除もあなどれません。受け取り方一時金、年金、併用の3種類から選べます。一時金で受け取る場合は「退職所得控除*」が適用され、積立期間が20年なら800万円、30年なら1500万円まで非課税で受取れます。また年金として分割受取りする場合は「公的年金控除*」が受けられます。(参考:国税庁HP)

現在iDeCoの受け取り開始時期は、60歳以降70歳になるまでの間で選ぶことが可能ですが、その選択の幅が60歳から75歳になるまでに拡大されます。公的年金の繰下げが75歳まで可能になることもあり、多様化する働き方・暮らし方に合わせられるような制度変更となっています。(国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト参照

40代からでもメリットは十分

イデコの場合、実際どれくらいお得なのでしょうか。

40歳、年収450万円独身の方が月々2万円を積み立てた場合、20年間で❶積立時に年間で96万円節税できます。また、利回り5%で運用できた場合60歳時点で資金は822万円となり、本来❷利息・運用益に対して20.315%かかる税金が非課税になることで68.4万が節税*になります。

❶と❷のメリットで節税できたお金を合計すると、20年間で164万円余りも得します。

長期投資では、運用で得た利益を元本に加え、翌年も自動的に再投資し、それにまた運用利益がつく「複利」の効果が見込める。そのため、雪だるま式に増えます。

イデコでも、つみたてNISAでも、毎月2万円を20年間5%で運用した場合、元本480万円に対して最終的に積立額は822万円にもなります。両制度ともに運用益への課税69.5万円がかからないので、342万円も得をします。しかしイデコの場合は値上がり益だけではなく掛け金も節税対象になるのです。

どっちを選ぶ?

老後資金を積み立てる目的なら、イデコの圧勝ではないでしょうか。理由の1つ目は、つみたてNISAの税優遇が❷の運用益に限られる一方、イデコは❶掛金❷運用益❸受取時の3つに対して優遇があることです。特に、働いて収入を得ている人にとって、所得税控除のメリットは大きく、収入(所得税率)が高いかたほど節税メリットが大きくなります。2つ目は、つみたてNISAが最長20年までしか非課税で運用できないのに比べ、イデコは40才から始めた場合でも、掛金の拠出は最長65歳までの25年間可能です(2022年5月以降)。また、受け取り開始時期も75歳になるまで繰り下げる事ができるようになる為、40歳の方でも最長35年間は❷運用益に対して非課税で運用できます。(国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト参照

資産形成の「目的」

イデコとつみたてNISAの節税面以外での大きな違いは、「資産を引き出せる期間に制限があるかどうか」です。つみたてNISAであれば、必要なタイミングでいつでも引き出せますが、iDeCoは年金という位置づけのため、60歳以上にならないと引き出しができません

  • 資産形成の目的が「老後への備え」か?
  • 60歳より前に使う可能性があるか?

つみたてNISAとイデコは運用益が非課税になるお得な制度です。2つとも年間の掛金に上限がありますが、両者の併用も可能です。イデコの制度を利用したうえで、余裕があるならば、いつでも引き出せるつみたてNISA等も併用されるのも良いでしょう。教育資金や住宅資金など、中期の資金づくりに適しています。ぜひ両者のメリットデメリットを理解しつつ、上手に使い分けて資産形成にお役立てください。
(ブログ記事:【40代向け】賢いお金の貯め方・増やし方はコチラ

イデコ(個人型確定拠出年金)に関するご留意事項

  • 原則、60歳まで途中のお引出、脱退はできません。
  • 運用商品はご自身で選択します。運用の結果によっては損失が生じる可能性があります。
  • 加入から受取が終了するまでの間、所定の手数料がかかります。
  • 60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合、段階的に最高65歳まで受取を開始できる年齢が遅くなります。
  • 積み立てられた商品の売買には、所定の日数がかかります(通常3~8営業日かかります)。
  • 退職などに伴い企業型確定拠出年金の加入資格を喪失した方は、6ヵ月以内にお手続きください。

 

終わりに

今回は、40歳以降の方が老後資金をこれから準備を始める場合として『iDeCo』をご紹介しました。ですが、実際に「どの制度を利用すべきか」は、収入・資産状況・家族構成・マネープランなど様々な要素で大きく変わります。まずはしっかりとご自身の年金と向き合い、そのうえで「老後資金とキャリアプランニング」を“早く”立てましょう

もしご自身でだけで判断するのが難しいと感じた場合は、ぜひファイナンシャルプランナー等専門家に相談して、あなたの働き方・収入・マネープランにあったアドバイスを受けてみましょう。

ぜひお気軽に、私たちのオンライン相談サービスをご利用ください。

記事中の計算結果はあくまでシミュレーションであり、概算金額を示唆・保証するものではありません。また、将来税制が変更になった場合結果が変わる可能性があります。
節税できる金額の算出に当たっては、第2号被保険者(会社員)の方の給与所得控除のみ収入金額から控除し、それ以外の控除は、お客様により適用可能な控除や控除金額に違いが生じるため考慮しておりません。従って実際の節税額とは異なる場合があります。 税制に関する事項については、最寄の税務署や税理士等の専門家にお問い合わせください。

 

(執筆者・ファイナンシャルプランナー 大熊 雅貴

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