新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業での就業のあり方も変わり、副業を推奨する大手企業も出てきました。企業の倒産件数も増加傾向にある中で、万が一の備えとして副業を真剣に検討されている方も増えてきているようです。
私も先日、フリマアプリやネットショップを使って副業を考えていらっしゃる方から「中古品の売買を行うための古物商許可の取得」について相談を受けました。
「中古品を売買するのに許可が必要なの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、中古品を取り扱う場合、「許可」が必要なケースがあります。フリマアプリなどで中古品を扱われている方は特に注意が必要です。
今回はどのような場合に「許可」が必要なのか? または必要ではないのか?についてお話をしたいと思います。
中古品を売買するのに必要な「許可」とは
中古品の売買など、中古品の取り引きを行う際のルールについて定めらている法律を「古物営業法」と言い、この法律に基づく許可のことを「古物商許可」と言います。
そもそも「古物」ってなに?
古物営業法? 古物商許可?ちょっと難しい言葉ですね。
「古物」という言葉は、法律で「一度使用された物品、もしくは使用されない物品で使用のために取引されたもの、又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」とされています。
法律の文言はやはり難しいですね。「古物」≒「中古品」というとらえ方でも良いと思います。
また、「古物」は法律で下記のように「13の区分」に分類されています。まず、取り扱う商品が、これらの区分に当てはまるかを確認する必要があります。
区 分 | 例 | |
① | 美術品類 | 書画、彫刻、工芸品等 |
② | 衣類 | 和服類、洋服類、その他の衣料品等 |
③ | 時計・宝飾品類 | 時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等 |
④ | 自動車 | 本体及びその部分品 |
⑤ | 自動二輪車及び原動機付自転車 | 本体及びこられの部分品 |
⑥ | 自転車類 | 本体及びその部分品 |
⑦ | 写真機類 | カメラ、顕微鏡、望遠鏡、ビデオカメラ等 |
⑧ | 事務機器類 | レジスター、タイプライター、パソコン、FAX等 |
⑨ | 機械工具類 | スマートフォン、工作機械、電化製品・工具等 |
⑩ | 道具類 | 家具、じゅう器、運動用具、楽器、CD/DVD等 |
⑪ | 皮革・ゴム製品類 | カバン、靴等 |
⑫ | 書籍 | 文庫本、コミック、写真集等 |
⑬ | 金券類 | 商品券、乗車券、郵便切手、航空券、収入印紙等 |
取り扱う商品が13の区分のいずれかに当てはまった場合、古物商許可が必要となる可能性があります。(どの区分か分からない場合は、管轄の警察署に確認をしましょう。)
では、どのような場合に許可が必要で、どのような場合に許可が必要ないのでしょうか?具体例を見ていきましょう。
「許可」が必要なケース
ケース①
中古品を買い付けて販売する。
一番よくあるパターンかと思います。私に相談をされた方も、古着や鞄などの中古品を買い付けてネット上で販売することを計画されていました。ちなみに、ネット上に新品として出品されていても、一度消費者の手に渡った商品は、法律上、「古物」となります。これらの物を仕入れて販売する場合は「許可」が必要です。
ケース②
買い取った中古品を修理して販売する。または、分解した部品を販売する。
中古品を扱うPCショップや中古車販売店などがこのケースにあてはまります。
ケース③
販売を委託された中古品を販売し、その手数料を受け取る。
委託を受けてオークションサイトに中古品を出品し、落札された場合に手数料を受け取るケースです。中古車や中古家電などのオークションサイトなどで、古物商が中古品の所有者から委託されて出品し、取引を成立させるケースです。
ケース④
買い取った中古品をレンタルまたはリースする。
中古車レンタル会社や中古CD/DVDレンタルショップなどがこのケースにあてはまります。
上記の4つが、ビジネス上、「許可」を必要とする主なケースです。中古品を扱おうとすると、多くの場合、いずれかのケースに当てはまるのではないでしょうか。
「許可」が必要ないケース
ケース①
自分で使用した、もしくは使用する目的で購入した物品を販売する。(転売目的で購入したものは除く)
フリマアプリなどで自分が使用していた物や、使うつもりだったけど未使用な物を販売する場合などがこのケースです。
ケース②
無償で譲り受けた物を販売する。
友人・知人からタダでもらった物などを販売する場合や、ゲームセンターなどで入手した景品を販売する場合がこれにあたります。
ケース③
自分が海外で購入した中古品を国内で販売する。
古物営業法で想定されている中古品は、国内で流通している中古品に限ります。そもそもこの法律の目的は、国内での盗品等の販売防止、被害品の早期発見のためにありますので、海外で自ら購入した物については、法律の趣旨から考えると対象とならないのです。
ただし、日本の輸入代理店などを仲介して中古品を仕入れる場合は、日本国内の事業者を通しての購入ですので、古物商許可が必要となります。
ケース④
自分が販売した相手から商品を買い戻す場合や、買い戻した商品を転売する。
ただし、商品を買い戻す際に、第三者が介在してしまうと古物商許可が必要になるので注意が必要です。
上記のように、許可が必要ないケースもいくつかありますが、中古品をビジネスの商材とする際には、思わぬトラブルを避けるためにも「古物商許可の取得」をお勧めします。
まとめ
今回は、古物商許可が必要なケースと必要ではないケースを見てきました。
まずは自分が扱いたい商品が、「13の区分」に当てはまるのか確認が必要です。その上で、「許可」が必要なケースのどれに当てはまるのかを確認してください。
ただ、「13の区分」のどれに当てはまるのか? 自分の営業スタイルは許可が必要なのか?判断を迷われるケースもあるかと思います。その際には、管轄の警察署(生活安全課など)に問い合わせをし、確認することをお勧めします。
次回は、古物商許可の申請をする際の注意点などについて、具体例を交えながらお話をしたいと思います。
執筆者:行政書士 曽山 満
行政書士事務所を平成26年1月に川崎市にて開業。許認可業務(古物商、飲食業、宅建業など)、国際業務(ビザ申請、帰化など)が主力業務。相談のしやすさときめ細やかなサービスには定評があり、多方面から相談・依頼を受けている。